「不動産会社に依頼したのに、もう何ヶ月も内覧すらない」「固定資産税と管理費が毎年かかるのに、先が見えない」——相続した実家の空き家が売れずに困っている方は、決して少なくありません。
空き家が売れない理由はひとつではなく、立地・価格・建物の状態・権利関係・売り方など複数の要因が絡み合っていることがほとんどです。原因を正しく把握し、それぞれに合った対処法を取ることが、状況を打開する第一歩になります。
この記事では、実家の空き家が売れない主な原因を類型化したうえで、具体的な対処法・相談先の選び方・売却以外の代替手段・注意したい税金の基本まで、一気通貫で解説します。
空き家を放置し続けることのリスクについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

実家の空き家が売れない主な原因5つ
売れない状況を打開するには、まず「なぜ売れないのか」を正確に知ることが重要です。よくある原因を5つに整理しました。
① 立地・需要の問題
最も根本的な原因のひとつが立地です。駅から遠い、バス路線が廃止された、過疎化が進む地方の集落、豪雪地帯や浸水リスクがある地域——こうしたエリアの物件は、そもそも買い手が少なく、価格を下げても反応が鈍いことがあります。都市部でも、前面道路が狭い・再建築不可・日当たりが悪いといった条件が重なると売れにくくなります。
② 価格設定が市場とズレている
「相続税評価額を参考にした」「知人から〇〇万円と聞いた」など、実際の市場相場とかけ離れた価格で売り出しているケースは非常に多いです。価格が高すぎると問い合わせすら来ませんが、一方で安すぎると損をしてしまいます。周辺の成約事例をもとに適切な価格を設定することが大前提です。
③ 建物の状態が悪い・老朽化している
築年数が古い・雨漏りや傾きがある・シロアリ被害がある・インスペクション(建物調査)で問題が発見された——こうした状態では、買い手がリフォーム費用を警戒して購入を見送るケースがあります。また、1981年以前に建てられた「旧耐震基準」の建物は、住宅ローンの審査が通りにくいため、買い手の絞られる要因にもなります。
④ 権利関係が複雑・相続登記が未了
相続登記が済んでいない、共有名義で全員の同意が取れていない、境界が確定していない、抵当権が残っているなど、権利関係に問題があると売却手続きを進められません。2024年4月から相続登記が義務化されていますが、古い物件ではまだ未登記のまま放置されているケースも見られます。
相続登記の義務化については、こちらの記事で詳しく解説しています。

⑤ 不動産会社・販売戦略の問題
依頼した不動産会社が地元に強くない、物件情報をレインズに登録していない(いわゆる「囲い込み」)、写真や説明文が不十分で購買意欲を引き出せていないなど、売り方に問題があることもあります。1社だけに長期間任せていると、こうした問題に気づきにくい点に注意が必要です。
売れない空き家を売るための具体的な対処法
原因が把握できたら、次は打開策を検討しましょう。原因ごとに有効なアプローチが異なります。
価格を見直す
まず確認したいのが価格の妥当性です。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で周辺の実際の取引価格を調べたり、複数の不動産会社に査定を依頼して相場観をつかみましょう。3〜6ヶ月売れない場合は、価格の見直しを真剣に検討するタイミングです。
不動産会社を変える・複数社に相談する
1社に「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」を結んでいる場合、契約期間は最長3ヶ月です。更新のタイミングで別の会社に切り替えたり、「一般媒介契約」に変えて複数社に同時依頼することも選択肢です。地元密着型の中小不動産会社の方が、その地域の買い手ネットワークを持っている場合もあります。
複数社への一括査定を手軽に行いたい場合は、ネット上の一括査定サービスが便利です。郵便番号や物件の基本情報を入力するだけで、複数の不動産会社の査定額をまとめて比較でき、相場感をつかむ第一歩として活用しやすいツールです。自分でいくつもの不動産会社に問い合わせる手間が省けるため、早期に打開策を見つけたい方はぜひ試してみてください。
インスペクション・リフォームで商品力を上げる
建物状態への不安を取り除くため、売主側でインスペクション(建物状態調査)を実施し、結果を開示する方法があります。大規模リフォームは費用対効果を慎重に見極める必要がありますが、清掃・片付け・簡単な補修だけでも印象は大きく変わります。「古家付き土地」として売り出し、買い手に解体・建て替えを委ねる方法も有効です。
権利関係を整理する
相続登記の未了や共有名義の問題は、司法書士に依頼して解決しましょう。境界が不明確な場合は、土地家屋調査士に境界確定測量を依頼します。これらは売却前に済ませておくことで、買い手の安心感を高め、交渉をスムーズに進めやすくなります。
買取業者への売却を検討する
不動産買取業者は、個人への仲介ではなく業者自身が買い取るため、成約までのスピードが速く、建物状態や権利関係に多少の問題があっても対応してもらえる場合があります。ただし、仲介での成約価格より低くなることが一般的なため、早期売却を優先するかどうかで判断しましょう。
どこに相談すればいい?相談先の選び方
「空き家 売却 どこに 相談すればいいかわからない」という方に向けて、状況別の相談先をまとめました。
不動産会社(仲介・買取)
売却の基本的な窓口です。地元に実績のある会社と、大手ネットワークを持つ会社の両方に査定を依頼し、比較することをおすすめします。複数社への一括査定サービスも活用できます。
司法書士・行政書士
相続登記の手続き、遺産分割協議書の作成、共有名義の整理など、権利関係の問題がある場合に頼れる専門家です。
土地家屋調査士
境界の確定測量や建物の表題登記など、土地・建物の物理的な情報の整備を担います。隣地との境界トラブルがある場合にも相談できます。
市区町村の空き家相談窓口
多くの自治体では、空き家に関する無料相談窓口を設けており、地域の不動産会社や専門家を紹介してもらえることもあります。補助金情報も入手できるので、まず窓口に連絡してみるのもよいでしょう。
税理士
売却時の譲渡所得税や特例の適用条件など、税務面での疑問は税理士に相談しましょう。売却前に相談することで、節税の選択肢を広げられる場合があります。
売却以外の選択肢(賃貸・空き家バンク・解体・国庫帰属)も検討しよう
「売れない」状況が続く場合、売却だけにこだわらず、ほかの選択肢も視野に入れることが重要です。
賃貸に出す
建物の状態が良好であれば、賃貸に転換して収益を得ながら保有し続ける方法があります。空き家のまま放置するよりも固定資産税の負担を賃料で補えますが、入居者募集・リフォーム費用・管理の手間が発生します。賃貸に出す際の手続きや注意点については、こちらの記事で詳しく解説しています。

空き家バンクに登録する
自治体が運営する「空き家バンク」は、移住・定住希望者と空き家所有者をマッチングする仕組みです。通常の不動産市場では買い手がつきにくい地方の物件でも、田舎暮らしを希望する層に届きやすい点がメリットです。登録は無料の場合がほとんどです。
解体して更地にする
建物を解体して更地にすることで、買い手が建て替えを自由に計画できるようになり、売却しやすくなる場合があります。ただし、更地にすると住宅用地の固定資産税特例が外れ、税額が上がる点に注意が必要です。解体費用の目安や補助金については、自治体の窓口に確認しましょう。
相続土地国庫帰属制度を利用する
売却も賃貸も難しく、管理も難しい場合に、一定の要件を満たせば土地を国に引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」があります。建物がある土地や、境界が不明確な土地などは対象外となるケースもあり、審査や費用負担もあるため、万能ではありませんが選択肢のひとつとして知っておくとよいでしょう。
売却時に見落としがちな注意点・税金の基本
空き家の売却を進めるうえで、事前に把握しておきたい注意点と税金の基本を整理します。
「3,000万円特別控除」の適用条件を確認する
相続した空き家を売却した場合、一定の条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)の譲渡所得の特別控除」があります。主な条件として、1981年5月31日以前に建築された建物であること、相続から売却まで空き家であったこと、売却金額が1億円以下であることなどが挙げられます(2024年以降、一部要件が改正されています)。ただし、適用条件は細かく、個別の状況によって異なります。ご自身のケースへの適用可否や手続きの詳細については、税理士にご相談・ご確認ください。
固定資産税の「住宅用地特例」への影響
更地にしたり、空き家が「特定空き家」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が大幅に上がる可能性があります。売却や解体の判断と合わせて、固定資産税への影響を事前に把握しておくことが大切です。
売却後の確定申告を忘れずに
不動産を売却して利益(譲渡所得)が生じた場合、翌年の確定申告が必要です。特例の適用を受ける場合も申告が必要なため、売却が完了したら速やかに税理士に相談することをおすすめします。
インスペクションと契約不適合責任
売却後に買い手から「告知されていない欠陥があった」として責任を問われるリスクがあります。これを「契約不適合責任」といいます。事前に建物の状態を正直に開示し、必要に応じてインスペクションを活用することで、トラブルを防ぎやすくなります。
まとめ:「売れない」状況を打開するための行動チェックリスト
実家の空き家がなかなか売れない場合、原因の特定と適切な打ち手の組み合わせが重要です。以下のチェックリストで、今の状況を整理してみてください。
- 原因の確認:立地・価格・建物の状態・権利関係・販売戦略のどれに問題があるか整理できているか
- 価格の見直し:周辺の成約事例と比較して、価格設定は現実的か
- 不動産会社の見直し:1社に長期間任せていないか。複数社への相談や会社の切り替えを検討したか
- 権利関係の整理:相続登記・共有名義の解消・境界確定は済んでいるか
- 建物状態の整備:清掃・片付け・インスペクションの実施を検討したか
- 専門家への相談:司法書士・税理士・自治体の空き家相談窓口に相談したか
- 代替手段の検討:賃貸・空き家バンク・解体・国庫帰属制度も選択肢に入れているか
- 税制の確認:3,000万円特別控除の適用条件・確定申告の準備ができているか
「売れない」状況は、放置するほど建物の老朽化が進み、維持費もかさみます。まずは自治体の空き家相談窓口や、地元に強い不動産会社への相談から一歩踏み出してみましょう。権利関係や税務の詳細については、司法書士・行政書士・税理士など各分野の専門家に個別にご確認いただくことをおすすめします。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・不動産に関する個別の助言ではありません。具体的な手続きや判断については、司法書士・行政書士・税理士などの専門家、または地域の農業委員会・自治体の窓口にご確認ください。
アイキャッチ画像: Photo by 雄一 田山 / Pexels


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